ユーディ・リッジウェイ設定まとめ

 

ユーディ・リッジウェイ(f22369)の性格と過去の設定まとめ置き場ですがまとめているのは趣味なので別に読まなくても大丈夫です。
※随分前に書いて公開を忘れていたものな上途中までしか書いていないので後々間違いなく増えます。

 

 

ユーディの話:

彼女の主題は『憧憬と恋』、『生の再獲得』、そして『悪』。

彼女は人殺しである。彼女が手を下したわけではない。ただ彼女は、彼女の親が――エウティミオ・バロウズというヴァンパイアが求めるままに、ユーディという少女に未来を与えるべく連れ出した、旅の男の居場所を、エウティミオに教えただけである。何故ならユーディにとって、旅の男の行為は理解しがたいものであったから。ユーディは、他人の『善』が理解できない。善意が理解できない。誰にも教わっていない故に。そして、彼女の本性故に。彼女は本質的に悪である(九雀も決して善ではないが、ユーディよりはまだ善に近い)。ただ、彼女は無知ゆえに、『男の行為の意味』を知ろうと思っており、それ故に善行を成してみようとしている。エウティミオがそう言ったからではあるが、行いとしては善に見える行為をしようと、してはいる。尤も、受けて来た暴力で鬱屈した精神により、非常に攻撃的でもあるので、善を成す前に攻撃して自分の前から排除しようとしたりすることはある。良くも悪くも幼さが強い。

いずれにせよ、かくして男は死に、エウティミオは「それをしてしまう程、自分に従順である」「罪を罪として理解できぬような盲いた愚者である」ユーディに愛想を尽かして(つまらないと思って)、「もっとちゃんと生きてみなさい」と放逐した。「お前が殺した男が為そうとしたことの意味を、そしてお前が行ったことの罪を知れ」と言った。エウティミオは悪である己を自覚しており、悪であろうとする、悪であることを誉と思う悪であるために、ユーディのような『無自覚な悪』というものはあまり好かない。罪は罪であるからこそ美しいのだと言う。なお、エウティミオの言葉は、「そうしたら、私がきちんとお前の希望を奪ってあげるから」と続く。リッジウェイと言う家名は旅の男の名字でユーディのものではない。ユーディがいつも持っている指輪は元々、旅の男のものだった。それを見たエウティミオが、ユーディを放逐する際に、「これを名乗ればいいだろう」と与えたものである。本人は文字が読めないため、指輪に彫られた模様が自分の名前だとは知らなかった(最近ヒーローズアースの校医に教えてもらった)。

ユーディの本当の家名は誰も知らない。ユーディが赤ん坊の頃に、エウティミオが彼女の母親を殺して連れ去ったからである。ユーディの母親は、ダークセイヴァーに流れてきた、アルダワ出身のドラゴニアンの女子生徒であった。その後言葉も通じない土地でどうにか生きてユーディを産んだが、彼女が聖なる光の持ち主であったが故に――隠れ住んだ森に倒れていた、木こりの男を、母親がその光によって助けたが故に――エウティミオがそれに興味を抱いてしまったが故に――ユーディの母親は、近くにあった村共々、エウティミオに惨殺された。ユーディを庇おうとした母親は、彼女を抱いたまま鼠に食い殺された。ユーディに母の記憶はない。そして興味もない。ユーディにとっての親とは、エウティミオただひとりである。

尤も、親とは言っても、エウティミオは一週間ほど面倒を見たところで飽きたため、実際に彼女を育てていたのは周囲の村々から連れて来られた乳母である。子供を人質に取られた女たちはユーディを育てたが、殆どの場合、彼女の羽や尻尾に嫌悪を覚えて「悪魔の子」と罵り、最終的に殺そうとしたため、己の子供共々鼠の餌にされることが多かった。唯一長続きしたのは死産で我が子を埋めた直後の女であったが、その女は環境の異常さに耐えかねて最終的に一年経たず完全に発狂して首を吊った。

母親は善人だった。望まぬ子ではあったが我が子であるユーディを大切にしたいと思っていたし(子供に罪はないし、自分の子供ではあるのだからと思っていた。また、自分と同じ種族である=少なくとも自分の住む周辺では迫害されると悟っていたので守ってやりたいと考えていた)、諦めていたところが多分にあったとはいえ、言葉もわからぬ異邦の地を愛そうと思っていた。エウティミオがユーディを連れて行こうとした時は激怒したし、覚えていた魔法で応戦しようともした。なお、父親は不明である。

ところで、前述したように、ユーディは他人の善意を理解できない。また、性根は悪であるものの、彼女は悪意についても真実理解しているわけではない。彼女の攻撃性に善悪の指向性はなく、ただ防衛のための攻撃であり、誰かを踏みにじるなどの考えはない。そもそもユーディにとってはエウティミオ以外の一切は等しく「得体の知れないもの」であり、現在はまだ学習途中であるため、良いも悪いもよくわかっていない。ユーディの価値観はまだ、混乱の最中にある。彼女の価値観を混乱させる一番大きなものは、「生きること」の是非である。物心ついた頃には地下牢の一室で、エウティミオに投げ入れられる襤褸切れのような人間たちの命を繋ぐ作業をしており、彼らから「殺してくれ」と叫ばれ、それを引きずっていくエウティミオもまた、「死の救済はまだお前たちには遠いものだよ」と笑っていたので、「生きること」=「つらいこと、早くやめたほうがいいこと」という式が彼女の中にはある。だが、地下牢を出て以来、世界では、「生きること」=「素晴らしいこと、できるだけ長く続けた方がいいこと」という価値観の方が主流であるようだと学習したために、完全にそこで理解が追いつかなくなっているのが現状である。あの地下牢では皆「もうやめてくれ、治さないで」と叫んだにも拘らず、今住むアパートには「早く治せ、死にたくない」と叫ぶ人々が飛び込んでくる、この矛盾を理解しない限り、彼女は「生きること」を理解することができない。即ち、彼女にとっての「生きること」ができないということでもある。

 

因みに、余談だが、九雀はユーディのことは好かないと思われる――彼女があまりに無自覚な悪であるために。あの仮面はそういった行いをあまり好かない。九雀は、(己の過ち故に)己の行いに自覚的でありたいと思っているところがあり、出来る限り『自分の行動の結果何が起こるか』を理解していたいと思っている。つまり、理屈で動きたがるし、『自分自身を理性によって支配していたい』と考えている(できているとは言っていない)。だからユーディのようにその場その場の感情で動く者を見ると、「貴様の生き方であるし好きにすればよいが、迷惑をかけてもよいという覚悟があってやっておるのか。そうでないならば他所へ行け、オレの周囲で行動するな」となる(その点で言うと、エウティミオの方が九雀としては好ましい)。ユーディも九雀のような性格の人間は苦手である。自分に理解できないことで怒るため。罪とか悪とか、そんな難しくてよくわからないことを言われても困る。『それを決めているのはいったい誰なの』とユーディは思っている。法律というものがあるらしいことは理解しており、それに反すると『罪』になることも理解している。だが、『法律に照らされない行為』について罪とか咎とか言われるのはなんだか理解ができない。罪という点において九雀とユーディはどこまでも平行線である。とは言え、あの二人が出逢うことはほぼないので(九雀はヒーローズアースに行きたがらないし、ユーディはUDCアースにあまり興味がない)、もしもの話に過ぎない。